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高年齢者雇用安定法の施行により70歳までの雇用が努力義務~2021年4月から変わること③~
4月から私達の生活の中で、大きく変わることがあります。
「介護保険料アップ」
「年金引き下げ」
「高年齢者雇用安定法の施行により70歳までの雇用が努力義務」
今回は、その中でも「高年齢者雇用安定法の施行により70歳までの雇用が努力義務」について、どのように変わるのか、原因や課題を詳しくご紹介いたします。
「高年齢者雇用安定法」とは
少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で「高齢者を雇用することで労働力を確保しよう」という目的で、1971年5月25日に「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定され、改称や改正を重ねて現在に至っています。
2012年の改正では、以下の3つのいずれかの措置を事業主に義務付けをしております。
- 定年を65歳に引き上げ
- 65歳まで継続雇用制度の導入
- 定年制の廃止
2021年4月から施行される詳しい内容
「対象事業主」
- 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
- 65歳までの継続雇用制度を導入している事業主
「対象措置(努力義務)」
以下のうち、いずれかの措置を講じるよう努める必要あり
- 定年を70歳に引き上げ
- 70歳まで継続雇用する制度の導入
- 定年制の廃止
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
なぜ70歳まで雇用確保年齢をあげたのか
雇用確保年齢をあげた理由には、少子高齢化によって公的年金が深刻な状況に陥っている問題があるからです。
かつては65歳以上の高齢者1人を10人以上の現役世代が支えていましたが、2015年には高齢者1人に対して現役世代は2.3人、2065年には高齢者1人に対して現役世代は1.3人の比率になると予想されています。
現役世代の負担軽減と財源確保のために、政府は公的年金の受給開始年齢を段階的に遅らせることにしました。
しかし、60歳で定年して65歳で年金受給開始にすると5年間の収入のない空白期間が生じるため、「高年齢者雇用安定法」に定年引上げ、継続雇用を盛り込むことになりました。
努力義務とは?罰則はあるの?
2012年改正内容にある「65歳までの雇用確保措置」は義務となっていました。
それに対し、今回の「70歳までの就業確保措置」は努力義務となっています。
義務は「必ずしなければいけない」ですが、努力義務は「努めなければならない」ということになります。
しかし、検討・準備・具体的な行動をすることが必要とされていているので、罰則はないけど行政指導の対象になることがあるので、対応を進めないといけません。
事業主が準備しておくこと
「措置の選択」
労使間の十分な協議、個々からの聞き取りをする
- 勤務延長制度(役職、賃金、労働条件等の変更なくそのまま雇用を延長)
- 再雇用制度(定年時にいったん退職扱いし、雇用契約を再度締結)
a.役職・賃金など処遇の見直し
b.勤務形態の見直し
c.関係事業主および他社での継続雇用
d.無期転換ルールに関する特例
「対象者の設定」
曖昧な基準、差別的な基準は不適切とされています。
「高年齢者雇用状況等報告」
70歳までの措置に関する実施状況、労働者への措置の適用状況に関する報告を毎年6月1日にハローワークに提出しなければいけません。
「高年齢者が離職する場合の対応」
求職活動に対する経済的支援、再就職や教育訓練受講などの斡旋といった「再就職援助措置」を講じなければいけません。
まとめ
「70歳までの就業確保措置」は、今のところ努力義務ではありますが、怠っていると行政指導の対象になってしまいます。
今は努力義務でも将来的には義務になる可能性もあります。
少子高齢化は今後も避けられない問題です。
「高年齢者雇用安定法」への対応を進めるために利用できる助成金もありますので、いち早く準備を進めて、70歳までの就業確保措置ができるような体制を作ることが今後の重要な課題となります。
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